観劇記「表裏源内蛙合戦」

「表裏源内蛙合戦」

原作 井上ひさし
演出 蜷川幸雄
出演 上川隆也勝村政信、高岡早紀ほか

2008年12月13日に、大阪のシアターBRAVA!で観てきました。
蜷川さん演出の作品はオレステス(ギリシャ悲劇)、コリオレイナス(シェイクスピア悲劇)、オセロー(同)と見て4作目。古典戯曲じゃないものを見るのは初めてです。

神童、天才と呼ばれた平賀源内の孤独と苦悩、狂気を描く一代記。

上川さんを生で見るのは初、勝村さんはコリオレイナス以来なので約2年ぶりでした。

開演前のがらんとした舞台には衣装掛けが並び、黒子の人が準備で行き来しているのが丸見えで「え、この状態を客が見ていいの?」と思ってしまう開けっぴろげぶり。それが開演時間になると一瞬で暗転し、暗い中でバタバタと音がしていると思うとパッと舞台が照らされ、勝村さんを除く役者全員が裃姿で勢ぞろいしていたのです。あまりの早わざに、客席からどよめきの声が上がりました。上川さんらが口上を述べて客席を沸かせ、黒子の格好をした勝村さんが幕(歌舞伎のような黒・緑・橙の縦じまの幕。これがなぜか、ところどころ破れていたりすすけていたりしてボロボロ)を引いて本編がスタート。

源内は作家活動や学問、数々の発明で名を挙げ、世間からもてはやされます。今で言うタレント学者ですが、出世工作に失敗すると心を病んで人を殺し、獄中で食を絶って生涯を閉じました。

エレキテルを作ったことで知られる源内は、おカタい学者先生かと思いきや、女好きの上に出世欲のかたまり。何とかして幕府(それがだめなら大藩)に雇ってもらおうとあの手この手を使います。

しかし、スカウトしてくれた秋田藩に出向いて仕官しようとしていた矢先、困窮した農民に出会い、一揆に同情してしまったために仕官話は破談。老中の田沼にも媚びることができず、大衆からの人気も失い、貧乏生活に転落してしまいます。天才の頭脳と俗な功名心、子どもの好奇心、そして人間の体温をあわせ持った平賀源内を見ることができました。

今回は徹底して「日本の芝居」、特に歌舞伎をイメージした演出のように感じました。回り舞台、黒子を使った舞台上での早変わり、極彩色のごてごてした色遣いの衣装など。

吉原のシーンはかなりきわどくてドキドキしました。蜷川さんの舞台はよくWOWOWで放映されるのですが、これは深夜に放映しないといけないんじゃないでしょうか。何気なくテレビをつけて、いきなりこの吉原のシーンが流れてたら、絶対大人向けの番組だと思ってしまいます(笑)。

舞台の背景は全面鏡張りで、客席の観衆を背景に取り込んでしまうという「コリオレイナス」の冒頭でも使った手法。今回はこれが最初から最後まで通して使われていました。照明の使い方によって鏡に映るのが役者だけだったり、観客だったりするんですが、それが一番効果を発揮していたのが、源内が大衆の愚かさを罵る場面だったと思います。舞台上には源内と裏源内(勝村さん)の2人だけしかいない、まるで芥川龍之介の「闇中問答」のようなのに、数百、数千の物言わぬ目、目、目に取り囲まれている。源内の孤独が痛いほど伝わってきました。

勝村さんの歌声は初めて聞いたのですが、とても伸びやかで深みのある美声です!思わず聞き惚れていました。脳の中で何かの物質が出ていました。勝村さんの声と話し方、すごく好きです。低く深くよく響き、長台詞を早口でしゃべっても何を言っているか聞き取れる滑舌のよさ。笑うと大きな目の目尻が下がって、すごく人懐こい。「コリオレイナス」のシリアスな演技とは違った良さで、ますますファンになりました。

「表裏源内蛙合戦」は1月12日にWOWOWで放送されます♪(詳細
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テーマ : 観劇 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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奈津

Author:奈津
198X年生まれ。
フリーランス翻訳者。
関心は雇用(特に若い世代の)とか日本語の変遷とか。
家の周りは田んぼです。

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