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夏の読書感想文2 "Life on the Refrigerator Door"

Life on the Refrigerator DoorLife on the Refrigerator Door
(2008/08/01)
Alice Kuipers

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冷蔵庫のうえの人生冷蔵庫のうえの人生
(2007/12/08)
アリス カイパース

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この小説は、シングルマザーと15歳の娘・クレアの間で交換されるメモ書きから成っています。母親は産婦人科医で非常に多忙なので、冷蔵庫のドアにマグネットで留めた書き置きでしかクレアと会話できません。クレアの父親とはずいぶん前に離婚しています。

最初は、2人の書き置きは「スパゲティボロネーゼを作っておいたわ」「鍵を忘れないで」といった、ごくありふれた日常のやり取りです。しかしある日、母親が「胸にしこりがある」と明かします。クレアは母を励まし、支えますが、母の病状は悪化の一途をたどり、乳がんで亡くなってしまいます。当初はすれ違いがちな2人がかろうじてコミュニケーションをとる手段にすぎなかった書置きが、いつのまにか「面と向かっては言えないこと」を伝える大切な方法になっていきます。

この物語の主要なテーマは、時間の大切さです。母ががんであることが分かってから、2人はともに、世界が今までよりも色鮮やかに見えるという経験をします。母親は木の葉の色に目をやっていますし、クレアは「なぜか青がもっと青く、赤がもっと赤く、それに黄色は太陽が輝いているみたいに見える」とつづります。これはおそらく、2人が一緒に過ごせる時間の終わりが近づいていることに気付いたゆえでしょう。死を意識し、今までよりもずっと時間が大切なものになったことから、母親はメモに「まだスカイダイビングもしていない、釣りもしたことがない、砂漠も見たことがない」とやったことのないものを書きますが、クレアは「お母さんがこれまでしてきたことを知りたい」と言います。「今まで、お母さんの人生についてほとんど何も知らなかった」と。家族や友人、愛する人と過ごす時間にはいつか終わりが来るのだということに、大半の人は死がはっきりと近づいてくるまで気づきません。著者はそうした人たちとの関係がいかに大切なものかを教えてくれます。

そしてもう一つのテーマは、「人を支える」ということです。当初、母親はクレアに「心配しないで」と言い続けます。しかし、しこりががんであると分かったとき、彼女は娘に支えになってほしいと求め、迷惑をかけたくなくて努めて平静にしていたと明かすのです。そして病状が悪化すると、母親はクレアに「自分が世界中でたった一人みたいに振る舞っていてごめんなさい」と謝ります。彼女は同じ乳がんの女性から、「娘さんを遠ざけないで」と懇願するように言われたのでした。私たちは困難な状況に陥ったとき、しばしばそれを自分一人で解決しなければならず、家族や友人に迷惑をかけてはならないと考えがちです。しかし実際には、家族や友人は大切な人が何か悩みを抱えていれば、進んで助けになりたいと思うものです。著者は、助けや支えが必要なときには周囲の人を積極的に頼るべきだと教えてくれています。むしろそうしなければ、周囲の人たちは悲しく思うのですから。

母親と娘の絆が、シンプルかつ印象的な言葉でつづられている美しい作品。ラストは涙が止まりませんでした。
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テーマ : 小説 - ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

奈津

Author:奈津
198X年生まれ、富山県在住。
フリーランス翻訳者。
関心は雇用(特に若い世代の)とか日本語の変遷とか。
家の周りは田んぼです。

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