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夏の読書感想文:湊かなえ 「告白」

2009年本屋大賞1位の、湊かなえ「告白」を読みました。ミステリなので、ネタばれ注意です。

携帯で閲覧している方で、内容を知りたくない方は、この先スクロールしないで下さいね。

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シングルマザーの中学校教師・森口。4歳になる娘・愛美の父親はエイズ感染者だった。ある冬の夕方、森口の勤務する中学校のプールで愛美が水死する。愛美の死は事故死ではなかった。森口が担任するクラスの男子生徒、渡辺と下村が殺したのだ。学年が終わる終業式の日、森口は2人の名前を「A」「B」と伏せたまま、クラスの生徒たちに「事故」の真相を語り始める。そして森口は最後に、愛美の父親の血液をAとBの飲んだ牛乳に入れたと告げた…。

自分のもとを去った母親の愛情を確かめるために事件を起こそうと考える渡辺、渡辺への劣等感を断ち切るために、ささいないたずらに過ぎなかった「事件」を「殺人」にしてしまう下村、13歳という年齢ゆえに法で守られた2人に復讐を企てる森口。なんて救いのない物語かと、読んでいる間じゅう胸が重苦しくてなりませんでした。

しかし彼らの行動の動機は、「母に戻ってきてほしい」「自分の存在価値を感じていたい」「愛する子どもと幸せに暮らしたい」という、誰にでもある感情です。けれど、渡辺は母に直接会いに行こうとはせず、母へのメッセージのつもりで起こしたはずの「事件」は下村の手で「事故」にされてしまい、さらに大きな「事件」を起こさざるを得なくなります。一方、下村はエイズ感染を告げられて初めて命の尊さに気付き、愛美の死の真相を警察に話すと決意するにもかかわらず、「息子が殺人者」という事実に耐えられない母親から包丁を向けられ、逆に殺してしまうのです。

そして、2人をエイズに感染させるという復讐に失敗した森口は、渡辺のさらなる企てを知り、渡辺から母を永遠に奪ってしまいます。

考えずにいられないのは、なぜ渡辺はもっと早く母親のもとを訪ね、自分の気持ちを直接ぶつけなかったのか、なぜ下村は「理想の家庭像」との対比で息子を「失敗」だと言う母親に「ここにいる僕以外に僕はいない、いま生きている僕を認めてくれ」とぶちまけることができなかったのか――ということです。自分が愛する誰か、自分を愛してほしい誰かに、自分のありのままの気持ちを「告白」し、本気でぶつかることから無意識に逃げているのです。それが歯車のずれを生み、心の奥底の狂気を目覚めさせ、増幅させていきます。

かなりグロテスクな形でではありますが、本音をさらけ出してぶつかるところからしか人間関係は始まらない、ということをあらためて教えてくれた作品でした。

ラスト、森口が渡辺に自殺を許さず、その母を殺したことについてはいろいろな考え方があると思います。渡辺を生かし、その母も生かせば、母は高い確率で渡辺の「遺書」を読み、母子は和解できたかもしれません。森口はそれを許さなかったのです。それは一見すると、一連の悲劇の起点となった母親を奪うことで、渡辺を永遠に苦しめるという最大限の復讐のように思えます。しかし一方、森口は渡辺に「あなたの人格は母がつくったのではない、あなた自身がつくったものだ」と言っています。渡辺を母親から切り離すことでそのことを自覚させ、自分自身をまず見つめ直して、生き直せという最大限の叱咤のようにも思えるのです。

重く、暗いけれど、それだけでは終わらない一冊です。
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テーマ : ミステリ - ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

奈津

Author:奈津
198X年生まれ、富山県在住。
フリーランス翻訳者。
関心は雇用(特に若い世代の)とか日本語の変遷とか。
家の周りは田んぼです。

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